写真・文=澤村 徹
最近、中判デジタルが人気だ。この中判デジタルにKISTARレンズを付けたらどんな写りになるのだろう。今回はKISTARレンズ×中判デジタルをレポートしたい。
はじめに中判デジタルについておさらいしておこう。一般的なフルサイズ機は約36×24ミリのイメージセンサーを搭載している。それに対し、中判デジタルは通称4433センサーと呼ばれる約44×33ミリのイメージセンサーを採用した機種が多い。いわゆる中判フィルムよりは小さいが、フルサイズよりもひとまわり大きい。KISTARレンズは35ミリ判(フルサイズ)用だが、イメージサークルの大きいものは4433センサーでも撮影できるのではないか。実写してケラレの有無をチェックしてみようというわけだ。
今回は中判デジタルとして富士フイルムのGFX50S IIを用意した。43.8×32.9ミリのイメージセンサーを搭載した中判ミラーレスだ。この機種にマウントアダプター経由でKISTARレンズを装着し、実写していく。フルサイズ用レンズは中判デジタル用レンズよりイメージサークルが小さいので、ケラレが発生したり、周辺描写が乱れたりするだろう。その程度はレンズによって異なるはず。各種KISTARレンズの描写コンディションを見ていこう。
KISTAR 85mm F1.4
中判デジタルに35ミリ判レンズを付けた場合、中望遠レンズはケラレが少なく、広角寄りになるほどケラレが大きい傾向がある。実写してみると、KISTAR 85mm F1.4はGFX50S IIでケラレなく撮影できた。無限遠から近接までケラレなし。絞っても影響はない。また、周辺部でも開放からちゃんと結像していた。本レンズは中判デジタルで問題なく使用できる。GFX50S II装着時は35ミリ判換算67ミリ相当。ちょっと長めの標準レンズという位置付けだ。
KISTAR 35mmF1.4
35ミリ判の広角レンズは中判デジタルでケラレることが多いのだが、KISTAR 35mm F1.4は周辺減光っぽいケラレが出る程度だった。無限遠側で影が濃く、近接ではケラレをほぼ感じないことも。絞ると影が濃くなるが、開放近辺ではケラレなのか周辺減光なのか判断がつかない程度だ。
KISTAR 55mm F1.2
今回の試写でもっともケラレが大きかったのがKISTAR 55mm F1.2だ。無限遠側で四隅は大きくケラレが発生し、絞るほどに影が濃くなる。近接側はいくぶんケラレが軽減されるが、それでも背景を選んでケラレが目立たなくなるような工夫が必要だった。中判デジタルで使うのは厳しいレンズだ。
KISTAR 40mm F2.4(Prototype)
KISTAR 40mm F2.4はミラーレス用マウント(ソニーEおよび富士フイルムX)のレンズだ。そのためGFX50S IIには装着できない。そこで、現在開発中のライカMマウント版KISTAR 40mm F2.4をマウントアダプター経由で装着した。いわゆる試作レンズなので、試写結果は参考程度に留めてほしい。無限遠から近接までケラレが発生し、F4あたりまで絞ると影がかなり濃くなる。ただし、そもそもこのレンズは甘い描写が特徴ということもあり、ケラレ込みで写真として成立している。いうなればケラレの似合う甘さといったところだ。
以上、KISTARレンズの中判デジタルでの実力を紹介してみた。KISTAR 55mm F1.2はケラレが大きく使いこなしが難しそうだが、それ以外の3本はそれなりに実用できるだろう。特にケラレのないKISTAR 85mm F1.4は中判デジタルの常用レンズとして活躍できそうだ。中判デジタルで昭和テイストの描写がほしいなら、KISTARレンズという選択肢を検討してみてはどうだろう。
KISTAR LENS
昭和のノスタルジックな写りを現代の技術で再現した35ミリ判レンズです。KCYマウントを採用し、各種マウントアダプターで様々なミラーレス機でご使用いただけます。中判デジタルにもマウントアダプター経由で装着できますが、周辺部にケラレや解像力の甘さが発生する場合があります。中判デジタルで使う際はその点をご理解いただき、自己責任にて撮影にご活用ください。