Kistar the other side 第35回
ついにプロトタイプが組み上がった!

写真・文=澤村 徹

 

前々回のこのコーナーにて、Mマウント版KISTAR 40mm F2.4のパーツ製造についてレポートした。あれから三ヶ月、ついにプロトタイプが組み上がった。現状、世界で1本だけのKSITAR 40mm F2.4 Mを借りることができたので、早速外観から紹介していこう。

※本稿は量産前の試作品で記事を制作しているため、製品版と仕様が異なる可能性があります。この点をご了承いただいたうえでご覧ください。

ライカM10につけて驚いたのは、ミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4に比べてひとまわり、いや、ふたまわりほど小さい点だ。単にマウント変換するのではなく、M型ライカにフィットするサイズ感に仕上げてある。当然のことではあるが、ライカのためのレンズというわけだ。見た目はコンパクトだが、真鍮製の鏡胴でズシリと手応えがある。シルバーの塗装も美しく、物としての存在感が撮り手に伝わることだろう。

ライカに装着して上から見ると、そのコンパクトぶりがよくわかる。外径はMマウントとほぼ同じで、薄型のパンケーキスタイルだ。

レンズ構成はミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4と同じだ。フィルター径は43ミリ。レンズ名の末尾に「M」がつき、Mマウントであることを示している。

可動部については、ピントリング、絞りリング、ともに滑らかな動きだ。ヘリコイドを繰り出した際にガタついたり、グリスのしみ出しに辟易することもない。さすがはMade in Japanといったところだ。目の肥えたライカファンにも納得してもらえるのではないか。なお、距離計連動精度については、このプロトタイプの調子を見たうえでさらに調整をかけていく。現時点での評価は控えるべきだが、今回試写した範囲では上々の仕上がりだとだけお伝えしたい。

真鍮の鏡胴にシルバークロームの塗装を施す。微光沢の美しいシルバーだ。各リングにはローレットを刻み、しっかりと操作できる。

M型ライカ用のレンズなので、当然ながら距離計連動に対応している。このプロトタイプで実写を繰り返し、完成度を高めていく。

レンズの描写傾向はミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4と同等だ。メーカーから「描写テストは省いてもらってけっこうです」といわれたほどである。あの独自の柔らかさをM型ライカでそのまま楽しめるわけだ。さらに実写して思ったのは、このレンズはレンジファインダーに向いているな、ということ。KISTAR 40mm F2.4は開放で派手に滲むため、ライブビュー撮影だとピントの山がつかみづらいことも。レンジファインダーは二重像合致方式なので、滲みに左右されることなくピント合わせできる。必然性という側面からも、KISTAR 40mm F2.4 Mの登場が待たれる。製品版の登場にはまだいくつかのハードルを越えなければならないが、進展があり次第、ここでレポートをしていきたい。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO200 AWB RAW 描写性能はミラーレスと同等で、開放の大きな滲みは健在だ。快晴だったのに、モヤがかかったような夕日が撮れる。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/60秒 +1.33EV ISO4000 AWB RAW 迫る市電にレンジファインダーでピントを合わせる。ライブビューだとこうはいかない。Mマウント版の意義を感じるシーンだ。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/60秒 -0.67EV ISO2000 AWB RAW 本の背表紙にピントを合わせる。近接寄りのカットだが、レンジファインダーでうまく合焦した。ガラス越しの甘さと開放のフレアが呼応する。

 

KISTAR 40mm F2.4


KISTARシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、KSEマウントとKFXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。左側が現在開発中のMマウント版、KISTAR 40mm F2.4 Mです。

 

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