写真・文=澤村 徹
35ミリレンズは古くからスナップシューターとして人気だ。35ミリという画角は、被写体とその場の雰囲気を丸ごと切り取れる。では、キスター35ミリF1.4でスナップすると、どんな写真が撮れるだろう。作品撮りのように肩肘を張らず、目の前の光景をテンポよく切り取っていく。そんな使い方をしたとき、キスター35ミリF1.4はどんな描写を見せてくれるのか。香港の街をキスター35ミリF1.4でスナップしてみた。
キスター35ミリF1.4でスナップするとき、まずポイントとなるのがF1.4という明るさだ。これは夜スナップで威力を発揮する。ISO感度を必要以上に上げることなく、夜の街を高画質に撮影可能だ。このレンズは開放で滲みをともなうが、それがまたナイトショットに興を添える。時間帯を問わず使えるレンズだ。
日中の開放撮影も抜群に楽しい。広角レンズは被写界深度が深くなるが、大口径F1.4だとそれなりに浅いピントになる。ワイドな光景から被写体だけがスッと浮き上がり、さらに前後のボケはやわらかくナチュラルだ。キスター35ミリF1.4でしかなし得ない描写がそこにはある。開放でのピント合わせはシビアだが、苦労が報われる絵作りだ。
ただし、キスター35ミリF1.4は開放がおいしいだけのレンズではない。1段絞ると目の覚めるようなシャープな写りになる。F4で画質的にピークに達し、開放とは似ても似つかぬ研ぎ澄まされた描写だ。被写体をちゃんと撮りたいとき、絞り込むことで妥協なき高画質を見せてくれる。
キスター35ミリF1.4で香港の様々なロケーションを撮り歩き、活用シーンの広さを改めて実感した。オールドレンズファンが好む開放のやわらかさ、そして現行レンズとしての高画質。このふたつのテイストを、1~2段絞りを操作するだけでスイッチングできる。叙情的にも叙事的にも、キスター35ミリF1.4は自在に変化する。開放からF4までをシーンに応じて使い分け、緩急の効いた描写を堪能してほしい。
Kistar 35mm F1.4
Kistar 35mm F1.4は、開放での柔らかなボケと絞り込んだ時のシャープな描写性を重視した広角レンズです。ピッチ研磨されたレンズとアルミ削り出しの鏡筒で、古き良き時代の質感を再現しました。フローティング構造により、無限遠から近接まで撮影距離を問わず高画質な撮影を可能とします。最新の高屈折率ガラスと非球面レンズの効果で、大口径スペックながらも小型化を実現しました。