Kistar the other side
第7回 一眼レフでキスター35ミリF1.4を操る

写真・文=澤村 徹

キスター35ミリF1.4はKCYマウントを採用している。これは有り体に言うと、ヤシカ/コンタックス互換マウントだ。マウントアダプターを装着してミラーレス機での使用を想定しているが、どうせマウントアダプター経由なら、デジタル一眼レフで使いたいという人もいるだろう。今回はキスター35ミリF1.4をキヤノンのフルサイズデジタル一眼レフで試してみた。

まず、ボディはEOS 5D Mark IIを使用した。フルサイズのイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフである。マウントアダプターはレイクォールのCY-EOSを選び、キスター35ミリF1.4に装着した。この組み合わせで内部干渉することなく撮影が可能だ。無限遠については、厳密に言うとごくわずかにオーバーインフだったが、1~2段絞るとほぼジャストに感じられる。通常の遠景撮影であれば、レンズの∞マークまで回し切って問題ない。

ちなみに、キスター55ミリF1.2は後玉が大きく飛び出しているため、フルサイズのEOSデジタル一眼レフだと内部干渉する。フルサイズのEOSデジタル一眼レフで撮れるのは、キスター35ミリF1.4のアドバンテージだ。

レイクォールのCY-EOSは、ヤシコン用マウントアダプターとして定評がある。レンズの着脱がスムーズな上、フランジバック調整が厳密だ。キスターシリーズとの相性も良い。

レイクォールのCY-EOSは、ヤシコン用マウントアダプターとして定評がある。レンズの着脱がスムーズな上、フランジバック調整が厳密だ。キスターシリーズとの相性も良い。

このEOS 5D Mark IIとキスター35ミリF1.4のセットアップで、伊豆北川を撮り歩いた。伊豆北川は温泉宿として有名な傍ら、その実、各駅停車しか停まらない無人駅だ。駅から海を目指すと、猫の額ほどの土地に民家が身を寄せ合い、その向こうに申し訳程度の小さな漁港が見える。まずは漁港から攻めていく。漁船の舳先にピントを合わせ、絞りを開け気味のままシャッターを切る。港の様子を広く写し込みつつ、漁船だけが風景から際立つ。キスター35ミリF1.4を持ち出すのであれば、こうした奥行き感のあるスナップが楽しい。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2.8 1/5000秒 ISO100 AWB RAW 開放寄りで背景をうっすらとボカして撮影した。広角35ミリはメインの被写体と広い風景を一緒に写し込めるのが楽しい。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2.8 1/5000秒 ISO100 AWB RAW 開放寄りで背景をうっすらとボカして撮影した。広角35ミリはメインの被写体と広い風景を一緒に写し込めるのが楽しい。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/8000秒 ISO100 AWB RAW 開放で漁船上のしめ飾りにピントを合わせた。やわらかく滲んでいるのがわかるだろう。滑らかな前ボケが合わさり、冬日のやさしいイメージを捉えることができた。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO100 AWB RAW 絞ると堅実でシャープな写りになる。階段に落ちる影を見ると、いかにシャドウの締まりが良いか実感できる。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO100 AWB RAW 絞ると堅実でシャープな写りになる。階段に落ちる影を見ると、いかにシャドウの締まりが良いか実感できる。

山に目を転じると、急斜面に民家とミカン畑が点在する。海沿いの道から路地に入り、細い階段を上へ上へと登っていく。この細い階段があちらこちらの民家をつなぎ、それは一筆書きのようであり、迷路のようでもある。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2 1/4000秒 ISO100 AWB RAW 急斜面の階段を息を切らして登り、ふと行く先を見上げた瞬間……、そんなイメージで撮影した一枚だ。前ボケを積極的に活かすことで、階段の先にある白壁と木がくっきりと浮かび上がる。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2 1/4000秒 ISO100 AWB RAW 急斜面の階段を息を切らして登り、ふと行く先を見上げた瞬間……、そんなイメージで撮影した一枚だ。前ボケを積極的に活かすことで、階段の先にある白壁と木がくっきりと浮かび上がる。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/1000秒 ISO100 AWB RAW 配管のハンドルにピントを合わせた。開放だと四隅の解像力が若干甘くなる。その点を見越して、ピントを合わせる被写体をやや内側に配置した。使いこなしを要する分、使うほどに愛着がわく。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/1000秒 ISO100 AWB RAW 配管のハンドルにピントを合わせた。開放だと四隅の解像力が若干甘くなる。その点を見越して、ピントを合わせる被写体をやや内側に配置した。使いこなしを要する分、使うほどに愛着がわく。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2 1/1250秒 -0.67EV ISO100 AWB RAW 道端の消火栓に開放寄りでピントを合わせた。ありきたりな被写体も、背景をボカすことで雰囲気のある光景に様変わりする。色合いも華美になることなく、自然な色調で好感が持てる。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2 1/1250秒 -0.67EV ISO100 AWB RAW 道端の消火栓に開放寄りでピントを合わせた。ありきたりな被写体も、背景をボカすことで雰囲気のある光景に様変わりする。色合いも華美になることなく、自然な色調で好感が持てる。

村を見下ろせる場所に立つ。眼下をトンネルから出てきた列車が走り、その下を国道がカーブしながらくぐり抜ける。こういうシーンはしっかりと絞って撮る。開放ではゆるく写るキスター35ミリF1.4だが、F4以降は隅々までシャープだ。シャープと言ってもギスギスすることなく、遠くをのんびりと眺めるような自然な描き方が心地良い。レンズ1本でも単調になることなく、いろいろなテイストでスナップできる。それがキスター35ミリF1.4の良いところだ。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F8 1/125秒 -0.67EV ISO100 AWB RAW 鉄道と国道が交差するポイントを俯瞰撮影した。F8まで絞って周辺部までしっかりと解像させる。いわゆるカリカリシャープではなく、自然なシャープネスがこのレンズの特長だ。

EOS 5D Mark II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F8 1/125秒 -0.67EV ISO100 AWB RAW 鉄道と国道が交差するポイントを俯瞰撮影した。F8まで絞って周辺部までしっかりと解像させる。いわゆるカリカリシャープではなく、自然なシャープネスがこのレンズの特長だ。

 

Kistar 35mm F1.4

Kistar 35mm F1.4は、開放での柔らかなボケと絞り込んだ時のシャープな描写性を重視した広角レンズです。ピッチ研磨されたレンズとアルミ削り出しの鏡筒で、古き良き時代の質感を再現しました。フローティング構造により、無限遠から近接まで撮影距離を問わず高画質な撮影を可能とします。最新の高屈折率ガラスと非球面レンズの効果で、大口径スペックながらも小型化を実現しました。

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