Kistar the other side
第8回 Kistar 35mm F1.4で桜を撮る

写真・文=澤村 徹

キスター35ミリF1.4で桜を撮りたい。そう思って静岡県賀茂郡河津町を訪れた。東伊豆の中程、河津川の両岸に早咲きの桜並木がつづく。ピンクの河津桜、黄色い菜の花、そして青い空。キスター35ミリF1.4のやわらかい開放描写が、早春の彩りをうまく捉えてくれるにちがいない。

ボディはライカMタイプ240を選んだ。M型ライカは距離計連動式のカメラだが、本機はライブビュー機能を搭載しており、距離計非連動の状態でもピント合わせが可能だ。マウントアダプターはレイクォールのCY-LMを使用した。ほぼジャストで無限遠が出て、遠景撮影でも使いやすいセットアップだ。

マウントアダプターでキスター35ミリF1.4をライカMに装着した。距離計連動はしないが、ライブビューを使って正確なピント合わせが可能だ。

開放で河津桜を撮る。キスター35ミリF1.4の品の良い滲みと桜の相性は抜群だ。やわらかく滲むことで桜の花にボリューム感が生まれる。撮影したのは2月中旬だが、春の陽気を感じさせる写りだ。試しに開放F1.4とF8で撮り比べしてみたところ、緻密に描く桜もわるくないが、こうしたやわらかい表現の方が春らしさが伝わってくる。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/4000秒 +1.33EV ISO200 AWB RAW 菜の花を前ボケにして、遠くの河津桜に開放でピントを合わせる。開放の滲みと前ボケが合わさり、春らしいやわらかな絵に仕上がった。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/2000秒 +1.33EV ISO200 AWB RAW 川面にしな垂れる桜を狙う。開放ゆえにやわらかい描き方だが、けっしてコントラストが甘いわけではない。開放から立体感のある描写だ。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/4000秒 +0.66EV ISO200 AWB RAW 開放で遠景の桜並木を撮る。ほどよい滲みが桜の花々をふっくらを見せる。キスター35ミリF1.4ならではの描写だ。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F8 1/180秒 +0.66EV ISO200 AWB RAW 上のカットと同じシーンをF8で撮影した。桜並木で隅々までシャープに描かれている。1本のレンズでこれほど緩急の効いた絵が撮れる。

筆者はこれまで、桜を撮るときはアンジェニュー35ミリF2.5を使うことが多かった。アンジェニューは軟調レンズとして有名なオールドレンズだ。軟調ゆえに影が付きづらく、桜の花をやさしく捉えてくれる。今回キスター35ミリF1.4を試してみて、桜撮りのスタメンとして使いたくなった。ソフトフォーカスだとさすがにあざとい気もするが、上品な滲みは満開の桜のボリューム感をうまく表現してくれる。この春はキスターの出番が増えそうだ。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/4000秒 +0.66EV ISO200 AWB RAW 比較的近い距離で桜の木に開放撮影した。背景がうっすらとボケて、大口径広角レンズならではの遠近感の表現が秀逸だ。

Leica M Typ 240 + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/4000秒 +0.66EV ISO200 AWB RAW 桜の花々がふんわりと滲み、軽やかに咲き誇る様を見事に表現している。このレンズの良さを最大限引き出したカットだ。

Kistar 35mm F1.4

Kistar 35mm F1.4は、開放での柔らかなボケと絞り込んだ時のシャープな描写性を重視した広角レンズです。ピッチ研磨されたレンズとアルミ削り出しの鏡筒で、古き良き時代の質感を再現しました。フローティング構造により、無限遠から近接まで撮影距離を問わず高画質な撮影を可能とします。最新の高屈折率ガラスと非球面レンズの効果で、大口径スペックながらも小型化を実現しました。

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