写真・文=澤村 徹
Kistarレンズはマニュアルフォーカスの単焦点レンズだ。レンズのピントリングを手動でまわし、撮影者自らがピント合わせを行う。撮影に積極的に関わる姿勢がMFの魅力だ。しかし、中にはMFが苦手という人もいるだろう。実は昨今、MFレンズ好きの間で話題のマウントアダプターがある。MFレンズをAF化するTECHART LM-EA7だ。今回はこのLM-EA7を組み合わせ、KistarレンズのAF撮影をテストしてみた。
本稿は澤村徹が独自にテストした結果であり、木下光学研究所がKistarレンズとTECHART LM-EA7の動作を保証するものではありません。同様のことを試す際は自己責任にてお願いいたします。
LM-EA7はマウントアダプター内部に小型モーターを内蔵し、マウント面を前後に動かしてAF撮影を実現する。対応ボディは像面位相差AFに対応したソニーEマウントボディだ。レンズ側マウントはライカMマウントを採用しており、ライカMマウントレンズをAFで使えるというのがLM-EA7の売りである。Kistarレンズを付ける際は、ヤシコン-ライカMマウントアダプターとLM-EA7を二段重ねにして装着する。
このようにLM-EA7はマウントアダプターの二段重ねで様々なレンズが装着できるわけだが、AF精度は装着したレンズによってちがいが見られる。これがLM-EA7の厄介なところだ。そこでKistarレンズとLM-EA7を組み合わせ、AFの効き具合をレンズごとにチェックしてみた。
まず、Kistar 35mm F1.4から見ていこう。Kistar 35mm F1.4は今回のテストでもっとも快適にAF撮影できた。開放で多少滲むレンズだが、AF動作には影響がないようだ。カメラ側でフォーカスエリアを「スポットS」にセットし、合焦位置をいろいろと変えながら撮影した。中心部はもちろん、周辺部に合焦位置を移動しても問題なくAFが効く。無限遠から近接まで、どの合焦距離でも速やかにピント合わせできた。
なお、Ksitar 35mm F1.4はフローティングフォーカスを採用しており、無限遠から近接まで、どの距離でも最良の画質が得られるように設計されている。そのため、LM-EA7を組み合わせる際はちょっとした注意が必要だ。LM-EA7はレンズのピントリングを無限遠にセットして撮影する。つまり、ピントリングが無限遠位置のまま、様々な距離にピントを合わせるわけだ。そのため厳密なことを言うと、設計者が意図した描写とはちがいが生じる。LM-EA7のAFとレンズ本来のMF、双方でどのような描写になるのか、撮り比べをしてみてもおもしろいだろう。
Kistar 55mm F1.2も支障なくAF撮影できたが、Kistar 35mm F1.4と比べると、AFが悩む場面が見受けられた。LM-EA7は開放でピント合わせするのが基本だ。Kistar 55mm F1.2は開放だと滲みが大きく、それが影響しているのかもしれない。ただ、あえて比較すれば、という程度なので、使いづらさを感じることはないだろう。
最後にKistar 85mm F1.4だ。LM-EA7は装着レンズの最大重量が500gとなっている。本レンズは重量542gなので、本来的には重量オーバーだ。自己責任の上でAF動作させてみたところ、合焦自体は正確で、ピント合わせの動作もスムーズだった。ただし、長期間にわたってこの組み合わせで使った場合、重量オーバーゆえにLM-EA7の動作に影響があるかもしれない。あくまでもこの結果は参考程度に止めてほしい。
このように、Kistarレンズは3本ともLM-EA7との組み合わせで快適にAF撮影できた。ボディはα7IIとα7RIIIを試し、どちらもスムーズに動作する。特にAF精度が良かったのはKistar 35mm F1.4で、梅の花のように小さな被写体にも的確にピント合わせできた。Ksitarレンズに撮影パフォーマンスを求めるのであれば、このように高機能タイプのマウントアダプターの力を借りるのも一興だろう。
KISTAR LENS
Ksitarレンズはオールドレンズテイストを意識した単焦点MFレンズです。高度経済成長期の勢いのあった光学製品をイメージし、趣味性の高い写真用レンズを目指しました。現在は35mm F1.4、55mm F1.2、85mm F1.4と3本をラインアップしています。