写真・文=澤村 徹
旅に出るとき、あなたは何ミリのレンズを持っていくだろうか。使い慣れた50ミリ、スナップに便利な35ミリ、それとも風景撮影に適した21ミリか。旅のレンズラインアップは実に悩ましい。そこで今回は、旅の相棒としてKistar 85mm F1.4の可能性を考えてみたい。
85ミリF1.4はポートレートレンズの代表的なスペックだが、もちろん人物撮影以外でもその実力を遺憾なく発揮する。その冴えたるシチュエーションが旅だ。はじめての土地を訪れる旅は、目にするものすべてがフォトジェニックに見える反面、どうしても気後れしてしまう。まして海外ともなれば、被写体に近づいてシャッターを切ることに、不安やリスクをおぼえることもあるだろう。こういうとときこそ中望遠レンズの出番である。85ミリレンズは、ちょうど大通りの向こう側を狙えるぐらいの距離感だ。この被写体をたぐり寄せる感じが旅先では実に頼もしい。
今回、広東省開平の旅にKistar 85mm F1.4を持参した。開平は世界遺産に指定された村落で、風変わりな建築様式の望楼で有名な場所だ。望楼の周囲に石造りの家が密集し、村落を形成している。開平は観光地であると同時に、現地の人が住む農村でもあるのだ。百年前の遺跡に人が住んでいる村、と言えばわかりやすいだろう。
開平は世界遺産である以上、写真撮影の制約は少ない。とは言え、人の住居を無遠慮に撮影するのは気が引けるものだ。Kistar 85mm F1.4は被写体と適度な距離を保ち、気後れせずに落ち着いて撮影できる。この距離を保つという点が、中望遠の旅レンズとしてのアドバンテージだ。村落の様々なディテールをピンポイントで切り取り、しかも大きなボケで印象的に捉えられる。標準レンズでも似たような撮り方は可能だが、写真のインパクトという点では中望遠レンズが有利だろう。
中望遠レンズは画角が狭く、風景全体を捉えるような撮影は苦手だ。お薦めは広角レンズとKistar 85mm F1.4の二刀流だ。これなら引きも寄りも思いのままに撮れる。撮影旅行のパートナーとして、Ksitar 85mm F1.4をプラスしてみてはどうだろう。
Kistar 85mm F1.4
Kistar 85mm F1.4は、木下光学研究所オリジナル設計による大口径中望遠レンズです。トラディッショナルなダブルガウス型を採用し、ナチュラルテイストのポートレート撮影を実現します。絞り込んでも繊細なタッチを宿し、過度に硬くならず、あくまでも自然な解像感を重視しました。オールドレンズテイストを宿しつつ、高描写を目指した大口径中望遠レンズです。