Kistar the other side 第27回
新型パンケーキレンズ試写レポート

写真・文=澤村 徹

木下光学研究所がシリーズ4本目となるKistar 40mm F2.4を開発中だ。今回のKistarはパンケーキレンズ。開発者によると、コンパクトでミラーレスに付けて手軽にスナップできるレンズを目指しているという。同社はこれまでKCYマウント(ヤシコン互換マウント)を採用してきたが、今回はミラーレスに直接装着できるように、ソニーEマウントと富士フイルムXマウントを採用する。パンケーキスタイルの恩恵を最大限活かせるわけだ。

カメラに装着して上から見ると、薄型レンズであることがよくわかる。軽快にスナップできるパンケーキレンズだ。

ソニーEマウントを採用。α7シリーズに直接装着できる。富士フイルムXマウントもリリース予定だという。なお、レンズ自体はフルサイズに対応している。

パンケーキレンズというと、その多くはそつなく写る。「小さいけどよく写る」が売りのレンズだ。これはレンズマニアからすると、普通に写ってあまりおもしろくない、と感じることもあるだろう。Kistar 40mm F2.4はそのあたりを踏まえた上での製品だ。勘のいい人なら、開放F2.4に何やら怪しい気配を感じるかもしれない。論より証拠、とりあえずは実写結果を見てもらおう。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/320秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 正面の錆びたシャッターにピントを合わせる。全体に柔らかく滲みをともなった写りだ。パンケーキレンズにしてはめずらしい。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 シャッタースピード優先AE F2.4 1/4000秒 +0.7EV ISO5000 AWB RAW 高速シャッターで水の流れを止めて撮影した。開放の滲みが前ボケと渾然一体となり、独自の柔らかさを生む。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/80秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 開放だとハイライトが特に滲みやすい。ソンベルチオや球面ズミルックスに似た写りが興味深い。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO100 AWB RAW 開放は周辺光量落ちが強く、柔らかい描写と相まって個性的な写りを楽しめる。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/400秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 鉄の扉を開放撮影した。パンケーキレンズとは思えぬ柔らかく滲みをともなった写りだ。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F4 1/200秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 同一シーンをF4で撮影。中心部がきわめてシャープで、扉の錆を緻密に描いている。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/500秒 ISO100 AWB RAW 開放だとCマウントレンズのように周辺部が暴れる。とてもクセの強い開放描写だ。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F4 1/250秒 ISO100 AWB RAW F4での撮影。周辺部に甘さが残るが、一気に硬派な写りになる。同じレンズとは思えぬ豹変ぶりだ。

どうだろう、パンケーキレンズとは思えぬ開放の写りに気づいてもらえただろうか。まるで大口径レンズで撮ったような甘い描写。それがF4まで絞ると急激にシャープになる。この強烈に緩急の効いた描写は、既存のパンケーキレンズと一線を画している。いわばKistar流パンケーキスタイルだ。

今回は速報ということで実写レポートに止めておくが、他のKistarシリーズと同様、Kistar 40mm F2.4も強烈な個性を備えたレンズだ。大口径レンズほどピント合わせにシビアになることなく、それでいて収差たっぷりの甘い描写を楽しめる。そして絞れば文句なしのシャープさ。実用一辺倒ではなく、撮る楽しさを前面に押し出したパンケーキレンズといえそうだ。

 

Kistar 40mm F2.4


Kistarシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、ソニーEマウントと富士フイルムXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。発売は2020年秋、税込価格66,000円程度を予定しています。

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