Kistar the other side 第38回
6000万画素にKISTARレンズは耐えうるか

写真・文=澤村 徹

昨今、デジタルカメラの高画素化が顕著だ。6000万画素クラスともなると、普及価格帯の純正レンズでは解像力が怪しいことも。カメラの解像度、レンズの解像力、その組み合わせが気になる今日この頃である。

では、KISTARレンズはどうだろう。そもそも昭和のレンズがモチーフなので、いわゆる高描写タイプではない。KISTARレンズに現行レンズのような高解像度を求める人はいないだろう。ただ、高画素デジタルカメラにKISTARレンズを付けた際、解像度不足で絵作りに支障を来すようでは困る。そこで高画素デジタルカメラとKISTARレンズの相性を見ていこうというのが本稿の狙いだ。

KISTAR 35mm F1.4は開放で柔らかく、絞るほどにシャープに写る。開放は相当ソフトな写りだが、実は非球面レンズやフローティング機構を採用した高機能レンズでもあるのだ。

今回用意したボディはライカM11だ。このデジタルカメラは6030万画素センサーを搭載し、かつトリプルレゾリューション技術によって撮影解像度を切り換えられる。フルサイズのまま、60MP、36MP、18MPの解像度が選択可能だ。このカメラを使えば、解像度によってKISTARレンズがどんな写りになるのか確かめられるわけだ。もちろんレンズの設計上の数値から適正解像度は導き出せるだろうが、そういう理論値的な話ではなく、実写した際にどのように見えるのを重視して検証してみたい。端的にいうと、KISTARレンズを6000万画素ボディに付けてちゃんと撮影できるのかを確かめたいのだ。

RAYQUALのLM-CYを使ってライカM11に装着。距離計連動はしないので、ライカM11のライブビュー機能を使ってピントを合わせる。ライカM11はEVFが新しくなり、拡大表示でピントが合わせやすくなった。

液晶メニューで撮影時の解像度を60/36/18MPから選択できる。これはクロップではなく、フルサイズのまま解像度が変化する機能だ。SNS用の写真で大きな解像度が不要ということであれば、36MPや18MPを選べばよい。

まず、ボディ側で解像度を変えながらKISTAR 35mm F1.4で開放撮影してみた。60MPはオーバースペックかと思いきや、実写結果を見ると解像度を水増ししような印象はない。36MPおよび18MPで撮った画像と見比べても、極端なちがいは感じなかった。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/2000秒 ISO64 AWB RAW 中央のバラに開放でピントを合わせ、解像度を変えながら撮影した。

60MPで撮影。元画像の中央部をクロップした。そもそも開放が滲むレンズなので、オーバースペックながらも見え方としては特に問題は感じない。

36MPで撮影。柔らかく繊細なタッチで、60MPと大きなちがいは感じない。なお、ライカ社は解像度を下げると階調がよくなるとアナウンスしているが、画面上からは実感できなかった。

18MPで撮影。理論的には18MPでの撮影がKISTAR 35mm F1.4とバランスがよいだろう。ただ、描写面では他の解像度と極端なちがいはない。

ただし、絞り値を変えていくと解像度によってちがいが見えてきた。18MPは絞るほどにシャープになっていくが、60MPだと先鋭感は極端に変わらず、被写界深度だけが深くなるような印象を受けた。とはいっても、ピクセル等倍で注意深く見てようやく気づける程度の変化だが。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F2.8 1/2000秒 +0.67EV ISO64 AWB RAW 60MP 解像度60MPで2段絞って撮影した。取り立てて鋭利というほどではないが、自然なシャープネスでKISTARらしい写りだ。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/640秒 ISO64 AWB RAW 60MP フレアの射すローファイな写りを狙った。60MPでも逆光ならフレアやゴーストは出て当たり前。解像度が変わってもレンズの光の捉え方は変わらない。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/2500秒 +0.67EV ISO64 AWB RAW 60MP 中間距離での開放撮影。ドームを覆ったバラがうっすらと滲む。KISTAR 35mm F1.4ならでは写りだ。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/3000秒 -0.67EV ISO64 AWB RAW 60MP 前ボケを多めに配置した。60MPだからといってボケ味が破綻することはない。

Leica M11 + KISTAR 35mm F1.4 絞り優先AE F8 1/250秒 ISO64 AWB RAW 60MP ウォールペイントをF8まで絞って撮影した。筆跡の凹凸をていねいに捉えている。

こうしたことを踏まえると、ライカM11では60/36/18MPと解像度が選べるが、昭和テイストのKISTARレンズだからといって解像度を下げたりせず、60MPで撮影しておけば問題ないだろう。他の高画素機でも同様、気兼ねなくKISTARレンズが使えるはずだ。目の前の使えるテクノロジーは積極的に取り入れて撮影を楽しみたい。

 

Kistar 35mm F1.4


Kistar 35mm F1.4は、開放での柔らかなボケと絞り込んだ時のシャープな描写性を重視した広角レンズです。ピッチ研磨されたレンズとアルミ削り出しの鏡筒で、古き良き時代の質感を再現しました。フローティング構造により、無限遠から近接まで撮影距離を問わず高画質な撮影を可能とします。最新の高屈折率ガラスと非球面レンズの効果で、大口径スペックながらも小型化を実現しました。

 

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