写真・文＝澤村 徹
2021年4月に設計図を公開してから1年余り、ついにMマウント版キスター40ミリF2.4が完成した。昨年11月にプロトタイプの外観をレポートしたが、それからさらにデザインがブラッシュアップされている。木下光学研究所初のライカ用レンズ、KISTAR 40mm F2.4 Mの実力をレポートしよう。
左がプロトタイプ、右が量産版のキスター40ミリF2.4Mだ。フォーカシングレバーを追加搭載し、塗装も質がよくなって高級感がある。レンズ自体はミラーレス用のキスター40ミリF2.4と同等だ。
プロトタイプからの大きな変更点はふたつある。ひとつ目はフォーカシングレバーの追加だ。オールドライカレンズでおなじみのフォーカシングレバーを搭載し、ピント合わせの操作性を向上した。M型ライカ用レンズは小さいため、ピントリングも必然的に幅が狭くなる。狭いピントリングをつかむより、フォーカシングレバーに指を引っかけて操作した方が格段に快適だ。このようなライカおよびレンジファインダー特有のお作法に則った鏡胴デザインを採用している。
ふたつ目は塗装だ。本レンズはシルバーのみの展開だが、量産型はプロトタイプよりもシルバーの光沢感が増し、より高級感ある塗装になっている。ガンメタリックに似た落ち着きのあるシルバーだ。実物を見ると、一気に所有欲が高まる外観である。
ライカM11に装着したところ。フォーカシングレバーを搭載したことで、ライカレンズっぽさが増した。もちろん見た目だけでなく、レンジファインダー用レンズとして実用性の高い仕様だ。
キスター40ミリF2.4Mはシルバーのみの展開だ。光沢感の強いシルバー塗装が美しい。薄型でコンパクトな鏡胴なので、常用レンズとしても扱いやすいだろう。
本レンズはKLMマウント（ライカMマウント互換）を採用している。同社初の距離計連動対応レンズだ。距離計連動精度は申し分なく、無限遠から近接まで狙い通りにピントが合う。そもそも開放F2.4のレンズなので、合焦精度にさほどナーバスになることはないだろう。
ライカM互換マウントのKLMマウントを採用。距離計連動精度は優秀だ。ライカM11にレンズ検出オフで装着し、問題なくライブビューが起動した。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/80秒 -0.67EV ISO8000 AWB RAW 開放で夜景を撮影した。あらゆる点光源が滲みをまとい、幻想的な世界を生み出す。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F8 1/80秒 ISO100 AWB RAW F8まで絞って遠景撮影した。開放ではかなり柔らかいレンズだが、絞ればすっきりとした写りになる。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/3000秒 ISO64 AWB RAW 壁面の「BAY」にピントを合わせる。夕刻の甘い光が滲みによって拡散されていく。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/1500秒 -1.33EV ISO64 AWB RAW ピントを合わせた尖塔といい、前ボケと化した葉といい、どちらもソフトな写りがたまらない。コントラストの付き方も開放からしっかりしている。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/3200秒 ISO64 AWB RAW ヨット側面の波の反射がおもしろい。ポールやワイヤーが滲みをまとい、このレンズでしかなし得ないソフトな写りを見せる。
Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F4 1/800秒 ISO64 AWB RAW F4で赤レンガにピントを合わせた。1段半絞っただけでこれだけ先鋭感が増す。開放とのギャップをうまく使い分けよう。
なお、昨今のデジタルM型ライカはライブビューならびにEVFに対応しているが、キスター40ミリF2.4Mに関しては是非ともレンジファインダーで撮影してほしい。本レンズは開放の滲みが最大の特長で、ジャスピンからわずかに外れたところが滲みやすい。ライブビューと拡大表示で厳密にピントを合わせるよりも、レンジファインダーでテンポよく撮影した方が自然な滲みを得られるのだ。キスター40ミリF2.4Mはレンジファインダー撮影の楽しさを引き出してくれるレンズだ。
KISTAR 40mm F2.4 M
軽快なスナップに適したパンケーキスタイルのMマウントレンズです。距離計連動対応、フォーカシングレバーなど、レンジファインダー向けのレンズとしてこだわった造形になっています。レンズはミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4と同等で、開放でソフトに、絞るとキレのある写りが楽しめます。
