Kistar the other side 第43回
KISTAR 40mm F2.4 Mでモノクロに浸る

写真・文=澤村 徹

 

今回はKISTARレンズをモノクロ写真を楽しんでみたい。周知の通り、現在はデジタルカメラ側でモノクロモードにして撮ることができ、画像編集ソフトでモノクロ変換する手もある。写真のモノクロ化はいたって簡単だ。ただし、カラー画像を単に白黒化すればいいというものではない。モノクロ写真らしさを演出するために、何かしらの工夫が必要だ。ここではその工夫としてKISTAR 40mm F2.4 Mを選んでみた。

本レンズは3群4枚のテッサー型だ。一般的にテッサー型は開放F2.8が多いが、このレンズはあえてF2.4と大口径化している。明るい反面、開放では滲みの多い写りになる。この滲みを楽しみたいレンズだ。

KISTAR 40mm F2.4 Mを選んだ理由は開放の滲みだ。このレンズは開放で柔らかく滲む。さらに周辺部の結像も怪しげなところがある。ちなみに、発色とコントラストはしっかりしてるため、カラーだとそこまで時代を感じるような写りではない。モノクロ化したとき、このローファイな写りがどう作用するのか興味深いところだ。

モノクロ化はRAW現像ソフトのLightroom Classicを使った。プロファイル機能から「白黒」を選んでモノクロ化している。白黒のプロファイルは複数あるのだが、トーンが極端に変わらないものを選んだ。その後、モノクロ写真としてサマになるように軽く整えている。わかりやすくいうと、やりすぎないようにモノクロ写真を制作した。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.8 1/4000秒 ISO200 AWB RAW 画面中央にピントを合わせる。シルエットと化した大きな鉄骨がうっすらと滲み、夢のワンシーンを見ているかのようだ。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO200 AWB RAW 水面から離れた位置に船の舳先が突き出す。モノクロにすると船体の白さが眩しい。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO200 AWB RAW 手前の塀にうっすらと斜光が当たる。モノクロ写真はこういった光の遊戯が興を添える。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/350秒 ISO200 AWB RAW 木製のパレットが山積みになっていた。日の当たった箇所がやさしく滲む。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/750秒 ISO200 AWB RAW 建物に挟まれた細い路地に、西日が長い影を描いていた。今にも綻びそうな像が心象風景を思わせる。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/3000秒 ISO200 AWB RAW 鉄骨の影が蜘蛛の巣のようだ。滲みの多いレンズだが、コントラストが低いわけではない。

Leica M10 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO200 AWB RAW 入り江にところ狭しと船が並ぶ。この景色は夢で見たことがある、とつぶやきたくなるような写りだ。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/800秒 -0.67EV ISO64 AWB RAW 太い木でできた唐臼が、山里に大きな音を響かせる。さてこれはいつの時代の写真だろうか。モノクロ化したKISTARレンズの絵は時間を狂わせる。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/160秒 -0.67EV ISO64 AWB RAW 登り窯を木製の屋根が覆う。前ボケと化した四角い石が、石としての存在感を失い今にも崩れそうだ。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/250秒 -0.67EV ISO64 AWB RAW 暗がりに目を凝らすと、シャドウの奥の奥まで描かれていることがわかる。

ここでは船の整備工場と窯元で撮った写真をモノクロ化したが、どうだろうか。すべてKISTAR 40mm F2.4 Mの開放近辺で撮影したものだ。船の整備工場は心の中の思い出を映像化したような印象を受ける。古い写真というよりも、追憶という言葉がしっくりくるだろう。窯元の写真は明らかに時間を遡ったような写りだ。歴史の教科書に載っていたら、「そうかこれが江戸時代の窯元の様子か」と信じてしまいそうだ。KISTARレンズの豊かな滲みが、心境や時間の感じ方に大きな影響を及ぼす。モノクロームはそのことをよりダイレクトに伝えてくれる気がするのだ。

 

KISTAR 40mm F2.4 M

軽快なスナップに適したパンケーキスタイルのMマウントレンズです。距離計連動対応、フォーカシングレバーなど、レンジファインダー向けのレンズとしてこだわった造形になっています。レンズはミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4と同等で、開放でソフトに、絞るとキレのある写りが楽しめます。

 

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