Kistar the other side 第57回
KISTAR 28mm F3.2 Mをミラーレスで使う

写真・文=澤村 徹

 

KISTAR 28mm F3.2 MはKLMマウントを採用している。M型レンジファインダー機で距離計連動する一方、マウントアダプター経由で大半のミラーレスカメラに装着可能だ。そこで今回は、旬のミラーレスカメラ、SIGMA BFとKISTAR 28mm F3.2 Mを組み合わせてみた。

理由はふたつ。ひとつ目はシルバーつながりだ。SIGMA BFは周知の通り、アルミ削り出しのユニボディだ。ここに同じくシルバーのKISTAR 28mm F3.2 Mを装着したらさぞかしかっこいいだろう。マウントアダプターのLIGHT LENS LAB M-L Macro(焦点工房で販売)を合わせ、全身フルシルバーにコーディネイトしてみた。

やる前からわかっていたことだが、KISTAR 28mm F3.2 Mがバツグンによく似合う。シルバー同士の好相性に加え、サイズ感もいい。ということは、KISTAR 40mm F2.4 MもSIGMA BFと似合うはず。KISTAR Mシリーズにとって、頼もしいミラーレスカメラが登場した。

隅々までシルバーのSIGMA BF。厳密にはKISTAR 28mm F3.2 Mのほうが暗めのシルバーだが、装着した雰囲気はわるくない。

マウントアダプターはLIGHT LENS LABのマクロアダプターを使った。KISTAR 28mm F3.2 Mは0.5mまで寄れるが、このアダプターだとそこからさらに寄れる。

レンズとマウントアダプター、それぞれにフォーカスレバーがある。通常はマウントアダプター側のフォーカスレバーを無限遠にセットし、レンズ側のフォーカスレバーでピント合わせする。

ふたつ目の理由はカラーモード(仕上がりモード)だ。SIGMA BFにはモノクローム(MONO)とウォームゴールド(W.GLD)というカラーモードがある。これらの仕上がりが実にレトロで、KISTAR 28mm F3.2 Mの柔らかい写りをうまく引き出してくれるのだ。レンズの持ち味だけで勝負しろという意見もあると思うが、われわれがKISTARシリーズを使う理由は、あくまでもレトロな写りのためである。使えるものはすべて使って、自分にとって最良の写りを模索すべきだと思うのだ。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/5000秒 ISO400 AWB JPEG(MONO) 滲みのおかげで霧が出ているように見える。この写真が撮れただけで、KISTAR 28mm F3.2 MとSIGMA BFを組み合わせてよかったと実感。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/3200秒 ISO400 AWB JPEG(MONO) 手前が番屋の廃墟。丘の上に見えるのがニシン御殿。軟調のモノクロで写すと、大昔の写真のような錯覚にとらわれる。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/2000秒 -0.67EV ISO400 AWB JPEG(MONO) 中央のブイにピントを合わせる。周辺はボケと滲みが混ざり合う。大きな収差とモノクロのおかげで、古い大判写真でも見ているような気分になる。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/6400秒 ISO400 AWB JPEG(MONO) 舳先にとまったカラスを狙った。広角なのでそれとなく全域にピントが合うが、そこはキスターの開放だけあってソフトな写りだ。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/1250秒 -1.33EV ISO400 AWB JPEG(MONO) 通路の先にある大きな岩にピントを合わせた。岩も手前の建物も、ほろほろと崩れ落ちそうな脆い写りがおもしろい。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F11 1/800秒 ISO400 AWB JPEG(MONO) F11まで絞り、全域に渡ってシャープにとらえる。リサイズ画像なのでわかりづらいと思うが、岩肌に無数の海鳥がとまっている。

カラーモードをモノクロームに設定した作例は、ひと目見て中間調の豊かさに惹きつけられる。1枚目の空と海の境界が溶けたような写りは、開放で大きく滲む広角レンズの面目躍如だ。2枚目の番屋はまるで明治時代にタイムスリップしたような佇まいで、モノクロスナップの醍醐味を体現している。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/1250秒 ISO400 AWB JPEG(W.GLD) ウォームゴールドに設定すると、このようにわかりやすく暖色寄りになる。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/4000秒 ISO400 AWB JPEG(W.GLD) 令和なのに昭和、正午なのに夕方。カラーモード選びひとつでKISTAR 28mm F3.2 Mの魅力がさらに増す。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/2500秒 ISO400 AWB JPEG(W.GLD) KISTAR 28mm F3.2 Mのやさしいトーン、ウォームゴールドによる緑かぶりの海面。相乗効果で普通の機材では得がたい写真に仕上がった。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/4000秒 ISO400 AWB JPEG(W.GLD) 本レンズは適度にコントラストがつくが、ウォームゴールドを選ぶとシャドウをほどよく持ち上げてくれる。印象が強くなりすぎないところがいい。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/2500秒 +0.67EV ISO400 AWB JPEG(W.GLD) 白いマーガレットをハイキーで捉えた。こうしたライト感覚のノスタルジーが簡単に撮れてしまう。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/4000秒 +0.67EV ISO400 AWB JPEG(W.GLD) 今回の撮影で一番気に入ったカット。年季の入った消波ブロックが暖色かぶりし、そこにKISTARの滲みが加わる。肉眼で見た世界ととても距離感のある仕上がりがいい。

SIGMA BF + KISTAR 28mm F3.2 M 絞り優先AE F3.2 1/100秒 -2EV ISO400 AWB JPEG(W.GLD) ライトアップの明かりが猫の目のようだ。緑の水面にオレンジの明かりが揺れ、すべてを穏やかな滲みが包み込む。

SIGMA BFのウォームゴールドは、暖色寄りの穏やかなコントラストに仕上がる。暖色系の色調はノスタルジックに仕上げる際のお約束。ここにKISTAR 28mm F3.2 Mの開放の滲みが加わるのだ。それはもう見事なノスタルジックフォトである。こうやってレンズ描写に合わせて仕上がりモードを選ぶのも一興だろう。

 

KISTAR 28mm F3.2 M


開放はF3.2とやや暗めながら、大口径タイプのようにソフトな描写が持ち味です。絞るほどに中心から周辺にかけてシャープな領域が広がり、F11でほぼ全域にわたって結像します。KLMマウントを採用し、M型レンジファインダーカメラで0.7mまで距離計連動が可能。ライブビューであれば0.5mまで近接撮影できます。

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