
写真・文=澤村 徹
かつては宮本武蔵、現在は大谷翔平。二刀流への憧れは今も昔も変わらない。それは写真用レンズについてもしかりだ。硬調と軟調、ふたつの顔を持つレンズは、古くから名レンズとして珍重されてきた。今年の初夏発売予定のKISTAR 28mm F3.2 Mは、そうした二刀流の描写を備えたレンズである。

その二刀流っぷりを堪能してもらうために、同一シーンで開放と絞ったときの写真を並べてみた。開放の滲みがいかほどのものか、そしてどの程度絞るとどれくらいシャープになるのか。その様子をじっくりと確かめてほしい。






暗めの広角レンズは開放からシャープと相場が決まっているが、このKISTAR 28mm F3.2 Mは開放F3.2と暗めなのに開放で滲みが出る。そして1~2段絞ると一気にシャープな描写になるのだ。広角レンズでありながら、絞りリングで描写の緩急を切り換えられる。まさに二刀流である。
わかりやすいのは開放F3.2とF5.6の比較だ。F5.6まで絞ると中心部が一気にシャープになり、開放との違いが一目瞭然だ。広角らしくパンフォーカスにしたいときは、F11~F16まで絞る。F8だとまだ周辺部に甘さが残る印象だ。ちなみに、F8でパンフォーカスに至らないのは他の広角レンズでもおおむね同様である。








実のところ、緩急の使い分け自体はさほどめずらしいものではない。オールドレンズにはよくあるパターンだ。ただ、広角レンズで緩急のあるレンズはかなり珍しい。パッと思いつくところでは、FD 24mmF1.4 ASPHERICALという大口径広角オールドレンズぐらいだ。大口径でハンドリングが難しいうえに、中古価格は100万円超えも珍しくない。こうしたことを踏まえると、KISTAR 28mm F3.2 Mの二刀流がますます際立ってくる。いつの時代も二刀流は奇貨居くべし、である。




