写真・文=澤村 徹
気負わずにスナップできるKistarレンズがほしい。2020年11月に発売になるKistar 40mm F2.4は、そんな開発者の思いを実現した製品だ。すでにKistarレンズは55mm F1.2、35mm F1.4、85mm F1.4と3本リリースされているが、どれも大口径タイプということもあり、それなりにボリューム感のある鏡胴だ。持ち出すには「今日はこいつで撮るぞ」と気構えが必要だろう。その点Kistar 40mm F2.4は、カメラに付けっぱなしにして撮りたい時にいつでも持ち出せる。そんなカジュアルなパンケーキレンズだ。
今回、仕事で地方を訪れた際、Kistar 40mm F2.4でスナップしてみた。ソニーα7RIVに装着し、カメラバッグの隅に押し込む。薄型のパンケーキレンズなので、場所をとらずに携行できるのがいい。良さそうなシチュエーションでさっとカメラバッグから取り出し、数カット撮ってカメラバッグにしまう。そんなお気楽なスナップができる。それこそ晴天下なら、片手で撮っても手ブレの心配は少ないだろう。小型軽量なレンズはそれだけでアドバンテージがある。
実際の撮影では絞りで描写に変化をつけて楽しんだ。Kistar 40mm F2.4は絞り値で劇的に描写が変わる。ここは積極的に使いこなしたいポイントだ。具体的には、開放F2.4とF4を多用した。開放F2.4は全体に滲みをともなうゆるふわな写り、F4まで絞ると中心部が一気にシャープになる。ちなみに、F5.6まで絞ると全域にわたってシャープになるが、このレンズ特有の甘さを残すなら、F4で寸止めするのがセオリーだ。そんなわけで、開放で派手なゆるふわを、F4でほどよいシャープさを堪能した。
実のところ、小型軽量というだけならレンズの選択肢はたくさんある。しかも開放から切れ味よく写るものが多い。記録的に写真を撮りたいなら、そうした選択肢から選んだほうがいいだろう。Kistar 40mm F2.4がおもしろいのは、小型軽量なのに、焦点距離40mmのパンケーキレンズなのに、描写の変化を存分の楽しめる点だ。ソフトフォーカス的な開放の浮遊感、絞った時の人格が変わったかのような鋭さ。Kistar 40mm F2.4は日常的なスナップに大きな変化をもたらしてくれるはずだ。
Kistar 40mm F2.4
Kistarシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、ソニーEマウントとフジフイルムXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。発売は2020年11月1日、税込価格66,000円を予定しています。