写真・文=澤村 徹
昨今、オールドレンズ好きの間でバブルボケが流行っている。有り体に言うと玉ボケなのだが、Trioplan 100mmF2.8などの玉ボケをバブルボケと称し、別格扱いする風潮があるのだ。トリオプランの玉ボケは輪郭がクッキリとして、まるでシャボン玉が飛んでいるように見える。それがバブルボケという名前の由来だ。このバブルボケブーム以降、オールドレンズ好きの間では玉ボケを積極的に楽しむ人が増えている。
さて、Kistarレンズが昭和のオールドレンズをモチーフにしているのは周知の通りだ。バブルボケブームの昨今、Kistarレンズの玉ボケも気になるところである。玉ボケを撮るには、背景に点光源がある状態で開放撮影する。もっとも手っ取り早いのがイルミネーション撮影だ。イルミネーションの前で人物を開放撮影すれば、それだけで無数の玉ボケが背景に生まれる。今回はKistarレンズ3本でイルミネーション撮影を行い、玉ボケの写り具合を比べてみた。
まずKistar 35mm F1.4からだ。本レンズは広角レンズということもあり、玉ボケのサイズは小さめだ。形状はやや歪みのある円形で、背景自体が揺らいでいるように見えてくる。絞り込むと多角形になるが、そもそも玉ボケの粒が小さいので、開放撮影とそれほど印象は変わらない。
次にKistar 55mm F1.2だ。このレンズは開放F1.2と頭ひとつ抜きん出て明るく、大きな玉ボケに期待できる。開放撮影では周辺部に行くに従ってレモン型に変形していく。注目すべきはF2の玉ボケだ。くっきりとした八角形で、しかも絶妙な傾きが付いている。もしかすると設計の段階で、絞り穴が美しく見えるように傾きを熟考したのかもしれない。Kistar 55mm F1.2を持っている人は、F2の玉ボケ(八角形ボケ)を試してみてほしい。
最後はKistar 85mm F1.4だ。大口径中望遠は背景が大きくボケるので、玉ボケは出しやすい。開放だと周辺部分が緩やかに回転し、興を添えてくれる。F2.8まで絞ると、画面均等に散らばるような印象だ。ちなみに、イルミネーションを背景にした人物撮影は、被写体に近づくほど玉ボケが大きくなる。
玉ボケは撮影条件によって表情が変わる。今回の写真は一例に過ぎないが、それでも焦点距離によっていろいろな表情を見せることがおわかりいただけただろう。また、Kistar 55mm F1.2の軽く絞った玉ボケも大きな発見だった。Kistarレンズの玉ボケ、ぜひ楽しんでみてほしい。
Kistar Lens