Kistar the other side 第32回
Mマウントの40ミリF2.4、鋭意開発中!

写真・文=澤村 徹

 

上の写真を見てほしい。ライカM10に、ソニーEマウント版のKistar 40mm F2.4が載っている。エイプリルフールでもないのに何の冗談か!? もし気分を害してしまったら申し訳ない。実はこれ、ジョークではない。いま木下光学研究所では、Mマウント版のKistar 40mm F2.4を開発中なのだ。

Mマウント版Kistar 40mm F2.4の外観図。Mマウント化にともない、鏡胴がひとまわりコンパクトになっている。

Mマウント版Kistar 40mm F2.4の断面図。レンズ構成は3群4枚のテッサー型だ。レンズ自体はミラーレス用と変わらない。

マウントパーツの加工図面。Mマウント特有の切り欠きのある構造が見てとれる。また、内側にヘリコイド用の溝が掘られている。

開発陣によると、設計をひと通り終え、試作に取りかかる段階だという。1枚目のMマウント版Kistar 40mm F2.4の外観図を見ると、鏡胴デザインはソニーEならびに富士フイルムXマウントのKistar 40mm F2.4とほぼ変わらない。2枚目の断面図を見ると、フィルター径が49ミリから43ミリに変わっており、Mマウント版のほうがひとまわり小さくなりそうだ。3枚目のマウントパーツの加工図面では、マウントに大きな切り欠きがあり、Mマウントになっているのがわかる。もちろんこれは距離計連動可能なMマウントだ。

断面図からは3群4枚のレンズ構成が見てとれる。ミラーレス版と同じレンズ構成を採用しているので、描写もおおむね一緒と考えられる。これは大きな魅力といえるだろう。周知の通り、Kistar 40mm F2.4は開放で大きく滲み、それがF4まで絞ると急激にシャープになる。ただし、周辺部は絞っても甘さが残り、この中心部と周辺部のギャップのある描写がたまらなくいい。以下にα7R IVで撮ったKsitar 40mm F2.4の作例を載せたので、改めてその魅力を確かめてほしい。こういうクセの強い描写は、ライカレンズだと限られている。それこそ球面ズミルックス、タンバール、ズマリットなど、伝説的なクセ玉くらいだ。Mマウント版のKistar 40mm F2.4が実現すれば、レジェンダリーな写りを手軽に楽しめるわけだ。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/5000秒 ISO100 AWB RAW ソニーα7シリーズでの実写例だ。開放はソフトフォーカス的な柔らかさがあり、そこに周辺部の甘い写りが興を添える。こうした写りをライカで楽しめる日がやってくるかもしれない。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/320秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 駅の連絡通路を撮影した。こうした何気ない光景を、Kistar 40mm F2.4が情緒的に切り取ってくれる。

α7R IV + Kistar 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/3200秒 ISO100 AWB RAW 遠方の山にピントを合わせ、頭上の樹木が大きくボケる。ボケるだけでなく、そこにやさしい滲みが加わり、このレンズでしかなし得ない世界観を描く。

実のところ、Mマウント版Kistar 40mm F2.4は製品化されるかどうか、まだ決まっていないという。距離計連動式レンズはKistarシリーズ初の挑戦であり、製品化は試作レンズの出来次第のようだ。現時点でわかっているのは、近いうちに試作を行うということ。試作レンズで実写ができたら、またこのコーナーでご報告したい。

 

Kistar 40mm F2.4

Kistarシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、KSEマウントとKFXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。

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