写真・文=澤村 徹
Nikon Z fが発売されてカメラ界隈がざわついている。フィルム一眼レフ風の漆黒のボディ。カメラ好きならどんなレンズが似合うか気になって仕方あるまい。筆者もしかり。Z fを入手してからアレやコレやとレンズを取っ替え引っ替えしている。そうしたなか、KISTAR 40mm F2.4がいけるのでは、と閃いた。
KISTARレンズの40ミリは複数のマウントをラインアップしているが、ここでターゲットとなるのはソニーEマウントのKISTAR 40mm F2.4だ。Nikon Z fはニコンZマウント機なので、当然ながらそのままでは装着できない。マウントアダプターを使う。ソニーEマウントのレンズをニコンZマウント機に付ける……。ミラーレスのレンズを他社ミラーレス機に付けるだなんて、そんなマウントアダプターがあるのか? あるのだ。
SHOTEN SE-NZを使うと、ソニーEマウントのKISTARレンズがNikon Z fに装着できる。今回このマウントアダプターでKISTARレンズを使っていく。
SHOTENのSE-NZがそれだ。電子接点はなく、MF操作専用のマウントアダプターだ。このマウントアダプターでKISTAR 40mm F2.4をNikon Z fに装着してみると、ほぼジャストで無限遠が出た。もちろん、実絞りで撮影が可能だ。佇まいに目を転じると、ボディとレンズの一体感が美しい。マウントアダプターが極薄のおかげだ。KISTARレンズは昭和のレンズをモチーフにしており、デザイン的にもNikon Z fと親和性が高い。この組み合わせはいける。
Nikon Z fはB&Wモードという機能がある。シャッタースピードダイヤル下のレバーでモノクロ撮影にすぐさま切り換えられるのだ。撮影データはもちろん、ライブビュー画面もモノクロになる。仕上がりをリアルタイムで確認しながらモノクロ撮影できるのだ。昨今流行りのモノクロ専用デジタルカメラっぽい使い方ができる。今回はこのB&WモードでKISTAR 40mm F2.4を使ってみた。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/200秒 ISO100 AWB JPEG モノクローム 色づいたイチョウの葉を明るく捉えてくれた。オーソドックスなモノクロ写真のトーンだ。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/50秒 ISO125 AWB JPEG モノクローム 下段のツバキの花にピントを合わせた。花と葉の濃度が近く、できればもっと花を明るく写したかった。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/200秒 ISO100 AWB JPEG モノクローム 周辺部の滲みとボケの合わさった描写に注目。揺らぎをともない、昔の湿板写真でも見ているような写りだ。
Nikon Z fのピクチャーコントロール(仕上がりモード)には、モノクローム(MC)、フラットモノクローム(FM)、ディープトーンモノクローム(DM)という3種類のモノクロがある。注目すべきはKISTAR 40mm F2.4の開放の柔らかい滲み、あれがどのモードと好相性かという点だ。各作例の撮影データにピクチャーコントロールの種類を明記している。参考にしながら作例を鑑賞してほしい。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/80秒 ISO100 AWB JPEG フラットモノクローム あっさりとしたトーンに仕上がった。沈胴エルマーあたりで撮ったようなノスタルジックをおぼえる。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/500秒 ISO100 AWB JPEG フラットモノクローム 左奥の銀杏の木を柔らかいトーンで捉えている。軟調のモノクロは令和なのに昭和に見える。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/125秒 ISO100 AWB JPEG フラットモノクローム 本来だともっとシャドウが落ち込むシーンだが、フラットモノクロームだとシャドウの奥のディテールまで見渡せる。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/400秒 ISO100 AWB JPEG フラットモノクローム アーケード越しに色づいた銀杏の木を狙う。アーケードの裏まで描きつつ、銀杏のトーンも美しく保っている。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F5.6 1/800秒 ISO100 AWB JPEG ディープトーンモノクローム 空がストンと落ち、鉄橋の引き締まったシャドウが凜々しい。KISTAR 40mm F2.4は絞ると硬派なレンズなのだ。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/4000秒 ISO100 AWB JPEG ディープトーンモノクローム 逆光でフェードっぽくなったおかげで、中間調寄りのいい雰囲気に。開放の滲みもこの雰囲気に貢献している。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/320秒 ISO100 AWB JPEG ディープトーンモノクローム シャドウがストンと落ちる一方、ハイライトが滲む。対照的な描写が1枚の写真の同居する。KISTARレンズの面目躍如だ。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/500秒 ISO100 AWB JPEG ディープトーンモノクローム 斜光で輝くアスファルト、スーパーカブの長い影。この強烈な対比にKISTARレンズの滲みが興を添える。
Nikon Z f + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/250秒 ISO100 AWB JPEG ディープトーンモノクローム 画面一面に白と黒の要素が散らばる。そしてそのどれもが柔らかいベールをまとう。
ひと通り撮影を終え、個人的にはフラットモノクロームとディープトーンモノクロームが気に入った。淡泊な写りのフラットモノクロームは開放の滲みが本当によく似合う。現在の光景なのに、タイムスリップしたような雰囲気がおもしろかった。絞り込んだときはディープトーンモノクロームのハイコントラストな絵作りがいい。シャドウがしっかり締まり、先鋭感が増して見える。ちなみに、開放でディープトーンモノクロームを使うと、漆黒のシャドウと滲むハイライトが同居する。アンヴィバレントな写りでこれもお薦めだ。KISTARユーザーでNikon Z fを持っているなら、ぜひB&Wモードを試してほしい。KISTARレンズの新たな魅力を実感できるはずだ。
Kistar 40mm F2.4
KISTARシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、KSEマウントとKFXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。