写真・文=澤村 徹
画質を度外視すると、カメラ・レンズの新たな可能性が見えてくる。撮影機材は画質を求めると肥大する。しかし、フォトグラファーは画質ばかりを追い求めるわけではい。手軽さ、機動性、他に類を見ない描写など、撮影機材へのニーズは多岐にわたる。Kistar 40mm F2.4は、そんな多様性の中でこそ実力を発揮するレンズだ。
今回はKistar 40mm F2.4をソニーα7Cと組み合わせてみた。α7Cは従来のα7シリーズと異なり、ペンタ部のないフラットなフルサイズミラーレスだ。パンケーキスタイルのKitar 40mm F2.4と好相性なコンパクトボディである。
このセットアップで実写してみると、明らかに軽快さが勝る。撮ることに気構えることなく、撮影自体が楽しい。景勝地とかフォトジェニックな被写体でなくても、身近なものにレンズを向けるだけで満足感がある。毎日の通勤通学路、近所の公園、自宅のリビング。そんなありきたりな光景ですら、撮っていて楽しくなる。小さくて軽いカメラ・レンズというのは、それだけで撮る者の気持ちに大きく作用するのだろう。
α7Cとの組み合わせだと、撮り方も変化する。ミラーレスの場合、MFレンズは拡大表示でていねいにピント合わせするのが正統派だ。しかし、このセットアップだとピーキングでざっくり撮ってもいいような気がしてくる。そもそもKitar 40mm F2.4は開放で滲みが強いから、ピントを過度に追い詰めることもないだろう。もしくは、40mmレンズの被写界深度を活かし、F5.6あたりまで絞ってパンフォーカス&ノールック的な撮り方もおもしろそうだ。いっそ、ハンドストラップで片手持ちというスタイルもいいだろう。レンズとボディの相性が、新たな撮影の楽しみを想起させる。Kistar 40mm F2.4は発想力を刺激するレンズだ。
Kistar 40mm F2.4
Kistarシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、KSEマウントとKFXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。