写真・文=澤村 徹
Kistarシリーズ第3弾が発表になった。Kistar 85mm F1.4、レンズ好き垂涎の大口径ポートレートレンズだ。55ミリF1.2からはじまり、35ミリF1.4、そして85ミリF1.4と、広角から中望遠までラインアップしたことになる。プロトタイプのKistar 85mm F1.4で試写する機会を得たので、ファーストインプレッションをお届けしよう。
まずレンズの概要だ。レンズ構成は5群6枚のダブルガウス型で、木下光学研究所オリジナル設計のレンズとなる。ヤシコンのPlanar T* 85mm F1.4とガラスの枚数は同じだが、設計は同社の完全オリジナルだ。しかしながら、Planar T* 85mm F1.4をまったく意識していないのかというと、そうでもない。直径はともに70ミリで共通。全長はKistarの方が若干長く、代わりに重量が53グラムほど軽く仕上がっている。大口径ポートレートレンズは重いものが多いので、Kistar 85mm F1.4の軽量化は大歓迎だ。なお、マウントは他のKistar同様、KCYマウントを採用している。
Kistar 85mm F1.4はその外観に目を奪われる。ストレートな円筒ではなく、ピントリング下部から絞り込まれ、いわゆるクビレのあるスタイルだ。初期型のElmarit-M 28mm F2.8がこうしたクビレのあるデザインだったが、とかくオールドレンズ好きの心に強く訴えかける外観である。この段差のあるデザインのおかげで、マウントアダプターとの連なりが自然だ。よく考え抜かれたデザインである。
さて、描写について見ていこう。基本的な描写は、他のKistarシリーズと同じく、オールドレンズテイストを意識している。開放でやわらかく、絞るほどに硬くなる。ただし、開放での滲みはさほど目立たない。ポートレートで滲みが大きいと、いわゆるソフトフォーカス的であざとい見え方になる。この点を考慮し、ごくわずかに滲みを感じる程度にチューニングしてある。また、絞り込んだ際のシャープさも、けっして硬質なものではなく、ナチュラルな描き方だ。開放の繊細さが、絞ったときに緻密さへと昇華する。オールドレンズライクな描写を保ちつつ、ポートレートへの最適化がなされている。
今回の試写はプロトタイプのKistar 85mm F1.4によるものだが、開発陣によると、描写傾向は現状でほぼ確定だという。現在、2017年12月以降の発売に向け、細部のブラッシュアップを行っている。今後もKistar 85mm F1.4で実写を重ね、本コーナーにて紹介していきたい。
Kistar 85mm F1.4
Kistar 85mm F1.4は、木下光学研究所オリジナル設計による大口径ポートレートレンズです。トラディッショナルなダブルガウス型を採用し、ナチュラルテイストのポートレート撮影を実現します。絞り込んでも繊細なタッチを宿し、過度に硬くならず、あくまでも自然な解像感を重視しました。オールドレンズテイストを宿しつつ、高描写を目指した大口径ポートレートレンズです。