
写真・文=澤村 徹
2025年12月15日、ついにKISTAR 28mm F3.2のミラーレス版が予約開始となる。KSEマウントとKFXマウントが登場し、発売は翌年の1月20日の予定だという。本稿ではひと足先に、KSEマウントのKISTAR 28mm F3.2で試写してみた。

KSEマウントのKISTAR 28mm F3.2は、ソニーEマウント機に幅広く対応している。
本製品の最大の利点は、ミラーレスカメラに直接装着できるところだ。KSEマウントの場合、主要なソニーEマウント機にダイレクトに装着できる。無論、KLMマウントのKISTAR 28mm F3.2 Mとて、マウントアダプターを経由すれば各種ミラーレスに装着可能だ。しかし、一部のマウントアダプターはオーバーインフ仕様になっているものがあり、レンズの∞マークでジャストで無限遠が出るとはかぎらない。その点、ミラーレス専用のレンズなら、∞マークでピタリと合焦する。
特にKISTAR 28mm F3.2は広角レンズなので、無限遠で風景撮影することも多いだろう。KSEマウントのKISTAR 28mm F3.2はミラーレスにダイレクトに装着でき、結果としてジャスト無限遠を得られる。これこそがアドバンテージなのだ。

KSEマウントはソニーEマウントとバヨネット形状の互換性がある。ただし、本製品はMFレンズのため、電子接点は搭載していない。

KISTAR 28mm F3.2をα7 Ⅳに装着したところ。ヤシコン風のクラシカルデザインが思いのほかα7シリーズとよく似合う。
次に見た目の美しさを挙げておこう。当然ながら、カメラから直接レンズが伸びる姿はバランスが良い。マウントアダプターを介さないぶん、レンズ部の全長が短くなり、カメラとの一体感が増す。また、ヤシコンレンズを彷彿とさせる鏡胴デザインがα7シリーズとよく似合う。パンケーキレンズほどではないが、全長が短くカメラに付けっぱなしでスナップを楽しみたくなるレンズだ。

本レンズの最短撮影距離は0.2mだ。ちなみに、KLMマウントのKSITAR 28mm F3.2 Mは最短0.5m(距離計連動は0.7mまで)となる。

KISTAR 28mm F3.2(右)とKISTAR 40mm F2.4(左)を並べて見た。デザインは似ているが、28mmのほうが若干背が高い。

KISTAR 40mm F2.4用のドームフードがKISTAR 28mm F3.2にそのまま装着可能。ただし、KISTAR 28mm F3.2にこのフードは付属していないので注意しよう。
描写面は発売済みのKISTAR 28mm F3.2 Mと同様、開放でほどよく滲みをともなう。オールドレンズでおなじみのこの滲み、その多くは標準レンズや中望遠レンズの十八番で、滲む広角レンズはかなり珍しい。広角レンズは風景撮影で使うことが多いだろうから、ランドスケープをソフトタッチで表現できるわけだ。その一方で広角レンズとしての使命、シャープに光景を捉えることも意識して作られている。本レンズをF11まで絞ると、隅々までシャープな写りだ。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/2000秒 ISO100 AWB RAW 晩秋の早朝、影の長い時間帯に廃校を開放撮影した。滲みはあるが、シャドウの締まりはいい。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/1600秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 開放F3.2なので、無限遠だとさほどボケは感じない。ただし、滲みと周辺の甘い写りが絵作りに妙味を与えている。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/800秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW プラス補正して紅葉を鮮やかに捉える。柔らかくどこか朧気な写りはこのレンズの真骨頂だ。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/500秒 ISO100 AWB RAW 開放ではとかく収差の多いレンズなので、こうした平面的な被写体でも単調にならない。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/1250秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 古い看板が斜光を浴びていた。柔らかく光景を捉える一方、コントラストは思った以上にしっかりしている。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/2000秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 赤いブイにピントを合わせる。ほぼパンフォーカスなのだが、多彩な収差のおかげで立体感が増して見える。

α7 Ⅳ + KISTAR 28mm F3.2 絞り優先AE F3.2 1/1250秒 ISO100 AWB RAW 木造家屋の写りを見ると、周辺に行くほど写りが甘くなる。ひとつの画面にシャープさと甘さが同居する。
ここではソニーE互換のKSEマウントを使用したが、富士フイルムX互換のKFXマウントも同時リリースだという。ともにミラーレスユーザーの新たな選択肢として、この滲む広角レンズは存在感を増してくるはずだ。
KISTAR 28mm F3.2

開放はF3.2とやや暗めながら、大口径レンズのようにソフトな描写が持ち味です。絞るほどに中心から周辺にかけてシャープな領域が広がり、F11でほぼ全域にわたって結像します。KSEマウントとKFXマウントを採用し、最新のミラーレスカメラに対応。0.2mまで近接撮影できます。

