写真・文=澤村 徹
大口径レンズで撮影するとき、あなたはNDフィルターを付けるだろうか。明るいレンズは日中晴天下だと露出オーバーしかねない。NDフィルターを付ければ光量を抑えることができ、適正露出でシャッターが切れる。ただ、F1.2のレンズは微妙に厄介なのだ。
KISTAR 55mm F1.2をα7 IVに装着し、晴天下で使う。α7 IVはメカシャッターで1/8000秒が切れるのだが、露出オーバーになることもしばしばだ。とはいえ、白飛びするほどの露出オーバーではないし、太陽が雲に隠れれば開放F1.2で適正露出で撮れる。NDフィルターを付ければ確実なのはわかるが、フィルターなしでもそこそこやれるのではないか? そんなわけで、今回はNDフィルターなしでKISTAR 55mm F1.2を晴天下で使ってみた。
季節は10月上旬、午後1時から午後3時かけてスナップした。青空に大きな雲が浮かび、10月とは言え、撮り歩くと汗ばむ陽気だ。普段ならND4フィルターを付けるシーンだが、今回はあえてフィルターなしで開放撮影した。案の定、強い日射しで露出オーバー気味のカットが多い。ただ、ハイキーで撮っているのだと思えばさほど違和感のない仕上がりだ。もちろん電子シャッター(α7 IVの場合はサイレントモード)に切り換えればより高速なシャッターが切れ、問題なく適正露出で撮影できる。ただ、開放F1.2で撮ったハイキーの写真は、その日の強い日射しを封じ込めていた。眩しい午後のひとときを、象徴的に表わした写真だった。
太陽が雲に隠れると、開放F1.2で問題なく適正露出になる。午後3時以降は日が傾き、もはや露出オーバーになることはない。NDフィルターを使わずにKISTAR 55mm F1.2で撮り歩くと、F1.2という明るさが刻々と変わる日射しに敏感に反応していることがわかる。日中晴天下のハイキーは、そのときの太陽の有り様そのものだ。太陽の呼吸という表現は大袈裟かもしれないが、KISTAR 55mm F1.2を外に持ち出すと、想像以上に光と戯れることができた気がするのだ。
KISTAR 55mm F1.2
KISTAR 55mm F1.2は、富岡光学のTominon 55mm F1.2をベースに、木下光学研究所が復刻生産した大口径標準レンズです。当時の設計者の指導のもと、開発思想を受け継ぎ、開放での柔らかなボケと絞り込んだときのシャープな描写性を再現しました。大口径ならではの透明感のあるレンズを再現するため、当時と同じピッチ研磨でレンズを磨いています。古いカメラは勿論、現代のカメラにもマッチするヤシカコンタックス風の外観を採用し、ヘリコイドはしっとりとした作動感を再現するため、当時と同じ現合ラップ仕上げを用いました。