Kistar the other side 第51回
外付け40mmビューファインダーは必要か?

写真・文=澤村 徹

 

いまさら外付けファインダーなんて、と多くの人は思うはずだ。ミラーレスカメラは言うまでもなく、デジタルレンジファインダーカメラだってライブビューを搭載するご時世だ。視野率100%のライブビューに勝るものはない。それでもなお、いま外付けファインダーを使うメリットがあるのだ。

KISTAR 40mm F2.4 MはM型ライカに付けると50mmブライトフレームを表示する。40mmレンズなのでブライトフレームよりひとまわり広いエリアが写るが、意識外を写せるというメリットがある。ただし、冗長なカットが増えてしまう点は否めないだろう。フレーミングが大ざっぱになるのだからやむなしだ。そこで、あえて外付け40mmビューファインダーを試してみた。果たしてどんな撮影体験が待っているのか?

今回はフォクトレンダー製の外付け40mmファインダーを装着して撮影した。このファインダーは生産終了しているが、中古品をときどき見かける。

外付け40mmファインダーを使った撮影はこんな流れになる。まず、40mmファインダーでおおまかに構図を決める。もし、前後移動が必要な場合はこの時点で行っておく。カメラ側のファインダーに移り、メインの被写体を中央に置いて二重像でピント合わせする。改めて外付け40mmファインダーを覗いて40mmブライトフレームで構図を決定する。

どうだろう。ちょっとどころか、かなり面倒な作業だ。しかし、ここに「間接の美学」があると思うのだ。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/80秒 ISO64 AWB RAW 中間距離で天井のウェーブを捉える。40mmファインダーを覗き、人が写り込まないアングルで撮影した。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/1500秒 ISO64 AWB RAW ピントリングを無限遠にセットし、40mmファインダーで人の流れを確認しながらシャッターを切る。素通しのファインダーは見通しがいい。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/320秒 ISO64 AWB RAW プレゼント箱のリボンにピントを合わせ、フレームの中央から少しズラして撮影した。ガラスの写り込みを意識し、40mmの画角をうまく使い切った気がする。

そもそもレンジファインダーカメラは、カメラの距離計とレンズを連動させてピントを合わせる。ファインダー上で見ている像が写る像ではない。間接的にカメラを操作し、間接的に撮影像をイメージしながら撮る。外付けファインダーを使うと、さらに間接性が増す。目隠しをして、手探りで撮るような感覚。ここにレンジファインダーの、そして外付けファインダーの妙味がある。うまく撮れたとき、このカメラを使いこなしているという確かな自信がわく。間接度合いが増すほどに撮影の難易度が増し、それを使いこなすほどに達成感が心に染みる。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/750秒 ISO64 AWB RAW 画面中央にピントを合わせ、40mmファインダーで傘の女性がひとりになるタイミングを狙った。カメラ側の50mmブライトフレームだと四隅を攻めた構図は難しいだろう。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F4 1/1600秒 ISO64 AWB RAW 色の濃いビルを中心に、シンメトリーな構図で撮影した。狙い通りに撮れたのは外付け40mmファインダーのおかげだ。

KISTAR 40mm F2.4 Mとの関係で言うと、日の丸構図以外の撮り方がよくキマる。外付け40mmファインダーを覗き、メインの被写体を周辺へ少し移動する。こうした中心を少し外した撮り方がいい。近接だとコサイン誤差が気になるところだが、そもそもKISTAR 40mm F2.4は開放で滲みが多い。少々ピントを外しても滲みがうまく吸収してくれる。見方を変えると、KISTAR 40mm F2.4 Mの特徴的な写りがマシマシになるのだ。

撮影の利便性ではライブビューに勝るものはない。しかし、趣味の世界なら撮影そのものも楽しみの対象だ。外付け40mmファインダーでKISTAR 40mm F2.4 Mの世界観を広げるのも一興だろう。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F2.4 1/1250秒 ISO64 AWB RAW 急いでピントを合わせ、路上の老人が行きすぎる前にシャッターが切れた。前ボケと滲みが合わさり、KISTAR 40mm F2.4 Mならではの写りになった。

Leica M11 + KISTAR 40mm F2.4 M 絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO64 AWB RAW F5.6まで絞り、無限遠で遠景を撮る。こういうセッティングだと、外付け40mmファインダーだけで集中してシャッターが切れる。

 

KISTAR 40mm F2.4 M


軽快なスナップに適したパンケーキスタイルのMマウントレンズです。距離計連動対応、フォーカシングレバーなど、レンジファインダー向けのレンズとしてこだわった造形になっています。レンズはミラーレス用のKISTAR 40mm F2.4と同等で、開放でソフトに、絞るとキレのある写りが楽しめます。

 

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