写真・文=澤村 徹
街はイルミネーション真っ盛り。しかし、このイルミネーションってやつは思いのほか手強い被写体だ。見た目は華やかだが、被写体としては小さな点光源の集まりにすぎない。イルミネーションのライトそのものにピントを合わせると、黒い紙にピンで穴を開けたような地味な写りになってしまう。
正直なところ、イルミネーションそのものを撮るよりも、背景として使うほうがいい。わかりやすい例はポートレートだ。人物にピントを合わせ、背景をぼかす。これならイルミネーションが玉ボケと化し、実に華やかな写りだ。ただ、イルミネーション撮影のたびにモデルを雇ったり知り合いを連れ歩くのは難しい。そこで、KISTAR 40mm F2.4にがんばってもらうことにした。
イルミネーションの光を滲ますため、今回は全カット開放F2.4で撮影した。ボディの手ブレ補正が効いて暗所でも1/30秒でブレなく撮れる。感度はISOオートでカメラ任せにした。
KISTAR 40mm F2.4は開放で柔らかく滲むレンズだ。この滲みがイルミネーション撮影に貢献してくれる。開放で点光源を撮ると、その周囲が滲む。イルミネーションのライトひとつひとつが周囲に滲みをまとい、肉眼で見るよりもふくらんで写る。KISTAR 40mm F2.4ならブーストされた光の乱舞が撮れるはずだ。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 +1.3EV ISO3200 カスタムWB RAW ピント位置は奥の木に合わせているが、イルミネーションに関しては奥から手前までどれも滲みをともなう。イルミネーションのラインが太く見えて存在感が増す。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 ISO2500 カスタムWB RAW イルミネーションの滲みに加え、木の枝に反射した光がいいアクセントになっている。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 +2EV ISO500 カスタムWB RAW 光の回廊っぽいイルミネーションを撮影した。ピント位置は画像中央で、周縁部にぐるぐるボケの気配がする。
実写してみると、狙い通りファットな光の群れを捉えることができた。通常だと点になりがちなイルミネーションが、ぶわっと滲んでファットに写る。焦点距離40mmなので大きな玉ボケには期待できないが、それでも口径食で歪んだ玉ボケが画面上に踊る。これはこれでにぎやかな写りだ。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 +0.7EV ISO250 カスタムWB RAW 左下の枯葉にピントを合わせ、奥のイルミネーションを玉ボケ化してみた。40mmでも近接ならこれくらいの玉ボケが出せる。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 +0.7EV ISO200 カスタムWB RAW オブジェに近接でピントを合わせ、イルミネーションを玉ボケとして写し込む。周辺部の玉ボケはややいびつな形状で、オールドレンズみたいな妙味がある。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 -0.7EV ISO4000 カスタムWB RAW ライトアップされた木を開放で捉えてみた。周辺に向って像の流れと滲みが強くなり、現行レンズらしからぬ写りに心揺さぶられる。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 ISO500 カスタムWB RAW 手前の小さなツリーにピントを合わせ、背景の大きな木のイルミネーションをうっすらとボカす。40mmだとボケ過ぎないため、背景のフォルムがしっかりと伝わる。
α7 Ⅳ + KISTAR 40mm F2.4 絞り優先AE F2.4 1/30秒 +0.7EV ISO1600 カスタムWB RAW イルミネーションを前ボケとして写し込む。白とピンクの滲んだ光が派手に彩る。
そもそもKISTAR 40mm F2.4はハイライト域が滲みやすい。そうしたレンズを使うことで、普段と違ったイルミネーション撮影を楽しめた。来年の春にはKISTAR 28mm F3.2 Mの発売が予定されているが、このレンズも40mm F2.4と同様に開放がよく滲む。来年のクリスマスはKISTAR 28mm F3.2 Mのイルミネーション撮影も試してみたい。
KISTAR 40mm F2.4
Kistarシリーズ4本目となるパンケーキレンズです。ミラーレス機に直接装着できるように、KSEマウントとKFXマウントを採用しました。レンズ構成は3群4枚のテッサー型。開放F2.4とやや明るめに設計することで、オールドレンズテイストの甘い開放描写を実現しています。