Kistar the other side
第15回 光の厚みをコントロールする

写真・文=澤村 徹

 

Kistarレンズは開放でほのかに滲む。合焦したアウトラインが、揮発するようにその周囲へと広がる。ソフトフォーカスほどの極端な描き方ではないが、開放のやわらかい滲みはKistarレンズの特徴だ。

さてこの滲みは、女性、花、動物など、被写体をやわらかく捉えたいときに便利だ。加えてもうひとつ、ぜひ試してほしいことがある。それは光の厚みのコントロールだ。開放で夕景や夜景を撮ると、光が拡散して厚みを増す。通常の夜景撮影は街明かりがキラキラと輝くが、Kistarレンズの開放で撮ると、光がふくらみその場を包み込むような写り方をするのだ。一方、1~2段絞ると光の膨張は影をひそめ、ソリッドな夜景が姿をあらわす。開けると光の厚みが増す。絞ると宝石のようにキラキラと輝く。光の姿を絞りで自在にコントロールできるわけだ。

絞りを開放にセットして、夕景や夜景にレンズを向ける。光が滲みをともない、まるで厚みを増したように見える。

今回は、Kistar 35mm F1.4で夕方から夜にかけての横浜をスナップしてみた。本レンズはKistarレンズの中でも特に開放の滲みが大きく、この手の撮影にうってつけだからだ。また、絞ると急激にシャープになるため、光の変化を堪能しやすい。Kistar 35mm F1.4は大口径のため元々夜スナップで使いやすいが、単に明るいだけでなく、光をファットに捉えるという面からもお薦めだ。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/8000秒 ISO100 AWB RAW 開放無限遠で夕陽にレンズを向けた。夕陽が拡散してやわらかく滲む。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/800秒 ISO100 AWB RAW うっすらと焼けた空に、滲んだ人影がおぼろげに浮かぶ。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2 1/60秒 -0.7EV ISO250 AWB RAW 1段絞って手前の船にピントを合わせる。わずか1段で開放と対照的な先鋭な描き方だ。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2.8 1/60秒 -0.7EV ISO500 AWB RAW 2段絞ると滲みはまったく感じられなくなる。隅々までくっきりとシャープに描く。

最後に、同一シーンを絞りを変えて撮ってみた。開放のファットな光、絞ったソリッドな光、どちらが好みだろうか。Kistarレンズなら、シーンや好みに応じて光の厚みをコントロールできる。光を滲ませるおもしろさを体感してほしい。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/60秒 -1.3EV ISO320 AWB RAW 開放で撮影すると、滲みで街明かりにボリューム感が出る。温かみのある雰囲気だ。

α7II + Kistar 35mm F1.4 絞り優先AE F2.8 1/60秒 -1.3EV ISO1000 AWB RAW 2段絞ると光が引き締まり、クールな都市風景といった雰囲気になる。

 

Kistar 35mm F1.4


Kistar 35mm F1.4は、開放での柔らかなボケと絞り込んだ時のシャープな描写性を重視した広角レンズです。ピッチ研磨されたレンズとアルミ削り出しの鏡筒で、古き良き時代の質感を再現しました。フローティング構造により、無限遠から近接まで撮影距離を問わず高画質な撮影を可能とします。最新の高屈折率ガラスと非球面レンズの効果で、大口径スペックながらも小型化を実現しました。

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